【00034】うつ病がなかなか治りません。どんな理由が考えられますか

A:うつ病が治らない理由は大きく分けて3つあります。

1.薬の服用方法が悪い

2.難治性のうつ病である。

3.そもそもうつ病ではなかった

一番多いのは1の薬の服用法が悪いです。以前にもお話しましたが抗うつ剤の効果発現は遅く、効果発現まで数週間かかるのが普通です。それなのに、この薬を飲んで治らないからすぐに違う薬に変えて、また治らないからさらに別に薬に変えている例をみかけます。そういったやり方は抗うつ剤の効果発現の特性を理解していない悪い服用方法であるといえます。抗うつ剤のよい飲み方は「十分量、十分時間」という言い方をすることがあります。

十分量というのはほぼその抗うつ剤の最大量と言い換えてもいいでしょう。十分時間というのは4~8週間です。つまり、最大量の抗うつ剤を4~8週服用してみてそれで効果がなかったら次の手段を考えるのが抗うつ剤のよい服用方法です。

つぎに、2.難治性のうつ病だった場合もあり得ます。十分量十分時間の抗うつ剤を服用してもよくならないなら次にどうしたらいいのでしょうか。別の抗うつ剤を追加する、増強剤として抗精神病薬を少量追加する、三環系の抗うつ剤に変更する、などの手段が考えられます。あと、クリニックでは難しいですがmECTという方法も効果的です。mECTは電気けいれん療法と呼ばれていまして、難治性のうつ病に効果は絶大なのですが大きな病院でしか施行することができません。薬の変更など試した後でmECTを検討するのがよいでしょう。3.そもそもうつ病ではなかったというのはどういう意味でしょうか。世間一般には気分が落ち込むこめばうつ病であると思われがちですが、そうではありません。気分が落ち込むことはうつ病以外にもたくさんあります。例えば財布を落としたら落ち込みます。彼氏にふられたら落ち込みます。けれどもそれらはうつ病ではなく一過性の気分の落ち込みです。こういった例と同様に、甲状腺機能低下症など心でなく身体の調子が悪いために気分が落ち込むことがあります。この場合、症状としてはうつ病とそっくりなのですが、甲状腺機能が低下しているために気分が落ち込んでるので甲状腺機能を治療することで気分も回復します。そして甲状腺機能低下症では、うつ病ではないので抗うつ薬は効果ありません。ほかにもうつ病のように気分が落ち込む病気はあるのです。

このようにうつ病がなかなか治らない場合、1.薬の服用方法が悪い、2.難治性のうつ病である、3.そもそもうつ病ではなかったなどの理由が考えられます。

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