Q:【00029】うつ病の種類にはどんなものがありますか

A:心因性のうつ病と内因性のうつ病があります。

あまり意識されることはないでしょうけども、心療内科・精神科のドクターは患者様のうつ病の種類についてかなり気にしています。この方はどのタイプのうつ病なんだろう、と診察しながら考えています。

うつ病の種類とはなんでしょう?それはうつの原因によって2種類あります。

1つは心因性のうつ病です。

一般の方がうつ病ときいて想像するのが心因性うつ病です。なんだ、心の病のことかと思われるかもしれません。たとえば、仕事がとても忙しくて休みも取れず、客先では怒鳴られ上司にはしぼられ毎日ストレスの多い生活をしている人が徐々に元気をなくしていくタイプです。一般的に、うつ病といえばこういったタイプのものを考えるのではないでしょうか。つまり、強いストレスにさらされることによって気持ちが落ち込んでいくことです。どんな人でも毎日毎日つらいことがあったら落ち込みますので原因としてはわかりやすいと思います。ストレスの大きさに見合った気分の落ち込みがあると思っていただければわかりやすいかと思います。

もう一つのタイプは内因性うつ病です。

これはちょっとわかりにくいかもしれません。原因というかきっかけはあるけど、どうしてそんなに落ち込んでいるのか周囲の人にはわかりにくいうつ病です。有名なのは女性の引っ越しうつです。ご夫婦で一生懸命働いて念願の新築の家やマンションを購入して引っ越ししたときに起こります。通常、そんなときは長年の夢がかなってうきうきのはずなのに、なぜか奥様の元気がなくなっていきます。初めは、近所付き合いが変わったのが原因かと思って周囲の人もそっとしておくのですが、そのうち信じられないほど落ち込んでいきます。こういったタイプを、引っ越しうつといいます。引っ越しうつは新築だけでなく通常の引っ越しでもよく見かけます。

このようにストレスの大きさと気分の落ち込みの量が合わないものを内因性のうつとよんでいます。例には女性に多い引っ越しうつをあげましたが、男性に多いのは昇進うつです。会社で昇進して給料もあがりウキウキのはずなのに、そのぶん責任もあがったと考えとても強く落ち込み会社にいけなくなってしまうものです。女性の引っ越しうつ、男性の昇進うつはよく見かけるうつです。

心療内科・精神科のドクターはこれらの心因性うつと内因性うつを区別しながら診察しています。

どうして、心因性うつと内因性うつを区別する必要があるのでしょう。

それは治療に違いが出てくるからです。今度、うつの治療についてお話したいと思いますが、

内因性うつ、つまり引っ越しうつや昇進うつは比較的抗うつ剤がよく効きます。極端な言い方をすれば抗うつ剤を飲んで休んでいればよくなります。元気になったらまたお仕事が始められます。

それに対し、心因性うつはそれだけではよくならないことが多いです。内因性うつと同様に抗うつ剤は使用しますが、元気になっても仕事にいけばまた気分が落ち込んでうつになってしまいます。なぜなら、心因性うつは仕事のストレスがうつの原因だからです。仕事のストレスがうつになる前と変わらないのなら、仕事にいけばまた強いストレスにさらされることになり、ストレスに見合った気分の落ち込みが始まります。したがって、心因性うつの方は仕事のストレスを軽減する方法を考えないといけません。そのため、心療内科・精神科のドクターは心因性うつと内因性うつを区別するのです。

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